東京都八王子市にある『アパートキタノ』は一戸が約18㎡、総戸数47戸のワンルームマンション。駅からはやや離れていますが、大学や専門学校が多く集まるエリアということもあり、現オーナーが購入した時点の入居率は98%でした。ですが、賃貸住宅の過剰供給が進む昨今。特に入退去の多いワンルーム賃貸は、駅からの距離と築年数が競争力になりがちです。オーナーは「賃料を下げる」以外のソリューションを求めていました。

そんなオーナーへ株式会社HandiHouse projectが提案したのは、“DIY賃貸”として貸し出すというもの。ただし、部屋のすべてを改装OKにするのではなく、「合板を貼った床と壁の一面だけを自由に改装して良い」というルールを設けました。賃貸物件をDIY可にする際、オーナーがどうしても抱いてしまうのが、「どんな改装をされるのかわからない」という不安。「改装OK箇所は合板部分のみ」というルールを設けることで、その不安を解消しました。さらに交換が容易な合板を使うことで、原状回復の負担も最小限に抑えました。

また、『アパートキタノ』はオーナーと地元不動産会社とHandiHouse projectの三社で合同会社を立ち上げ、オーナーから物件を「カリアゲ」して運営しています。改装費用の負担や管理運営、物件のプロモーションをこの会社で行うことで、オーナー自らがDIY賃貸を運用する際の手間を軽減しています。

DIYが可能な範囲を絞るという作戦は、入居者にとってもメリットがありました。DIY未経験者でも部屋のカスタマイズを楽しみやすく、かつ普通のワンルームにはない体験ができます。また、運営面でも入居者の満足度を高めるための工夫として、工具の貸し出しやシェアカー、住民と運営がやりとりできるチャットルームの用意、入居者の暮らしぶりをSNSで発信するなどし、良質なDIYとコミュニティ形成の促進、物件のブランディングにつなげています。結果、進学や就職などの都合で入退去の多いワンルームながら、入居者のコミュニティやSNS発信で新たな入居者が決まるという好循環が起きています。

（カリアゲ首都圏　HandiHouse project）

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