大久保弁護士の空き家相談室

大久保朝猛(へいわ総合法律事務所)

2017.03.07

#02 実家が持ち家=空き家オーナー予備軍!?

あなたはいくつ当てはまる?

「空き家が問題だ問題だ」と世の中で騒がれているのは知っているけど、「自分は関係ないでしょ」と思っている方は、少なくないと思います。

そこで突然ですが、「空き家オーナーになりやすい人」チェック!
以下の項目で当てはまるものにチェックをしてください。

CHECK1︎:実家は持ち家だ。
CHECK2:今、自分は実家に住んでいない。
CHECK3:将来、実家に住む予定はない。
CHECK4:兄弟姉妹がいるが、会うのは法事のときくらいだ。
CHECK5:兄弟姉妹のうち、実家で親と同居している人はいない。

あなたはいくつ当てはまりましたか?

…実は、上記の項目に1つでもチェックした方は、空き家オーナーになってしまう可能性があるんです!

「え?なんでそんなことで?」とお思いになるでしょう。
その理由をひとつずつご説明していきますね。

空き家オーナーになりやすいのはこんな人!

CHECK1︎:実家は持ち家だ。

ご実家が持ち家というのは、あなたのお父様かお母様、またはお祖父様かお祖母様といったご親族がそのご実家の持ち主、ということを意味します。

現在は元気であっても、人間は必ずいつか臨終のときを迎えます。そうなると、「相続」が発生します。ご実家の新たな持ち主を決めなければなりません。そして、その家を誰が使うのかという問題も発生します。

新たな持ち主がそこに住むことになれば話はスムーズですが、ご実家が、一緒に暮らしてはいないお父様のご兄弟とお父様の共同所有となっていた場合や、相続人が複数人いたり、相続人がそこに住まない場合はどうでしょう。

「実家が持ち家」というだけで、空き家オーナーになる可能性はグンと上がるのです。

CHECK2:今、自分は実家に住んでいない。

進学や就職、結婚などを機に実家を出て、現在は別の住まいに暮らしているという場合。もしもご実家に現在お住いのご親族が亡くなり、自分が相続することになったらどうでしょう?ご実家を出て、自分で家を買ったという場合は、その家から離れることが難しくなります。

賃貸であれば、住んでいる家を手放すことはできますが、仕事や人間関係など、その場所で自分の社会的立場が築かれている場合、ご実家がよほどの近隣でないかぎり、すぐにも実家に戻って自分が住んで使うという選択は、なかなかできないのではないでしょうか。

しかし、ここで実家に戻れなければ、あなたはその日から空き家オーナーになってしまうのです。

CHECK3:将来、実家に住む予定はない。

今のお住まいが賃貸だとしても持ち家だとしても、「今の住まいは仮住まい。将来は実家を継ぐつもりだ」と、かねてからお考えの方であれば、今のお住まいの扱いについてもあらかじめご検討済みでしょうし、空き家オーナーになる可能性は低いでしょう。

ただ、「将来、実家に住むつもりはない」という方の場合はどうでしょう。ご実家を相続しても、そこにお住まいにならないのであれば、ご実家は空き家となります。

「具体的にどうするかまでは考えていないけど、住むことはないな」といった漠然としたイメージしかしていない方は、空き家オーナー予備軍と言えるでしょう。

CHECK4:兄弟姉妹がいるが、会うのは法事のときくらいだ。

最近、兄弟姉妹でお話をする機会はありましたか?「実家を将来どうするか」について、話し合いをしたことはありますか?仲の良い兄弟姉妹でも、実家をどうするか?というお話は、なかなかしていないものです。

例えば、ご実家の現在の所有者がご両親の場合。遺言書がなければ、ご両親がお亡くなりになったあとは、実家は兄弟姉妹の共有財産になってしまいます。実家に誰かが住むにしても、売るにしても、貸すにしても、建物を壊して更地にするにしても、兄弟姉妹で相談して決定しなければなりません。

もし、そこで意見が合わなかったら?それでもお互い勝手に実家の使い道を決めることはできませんから、共有のまま現状維持=空き家のまま、とならざるを得ません。ここで、兄弟姉妹で仲良く空き家オーナーに就任、ということになります。

CHECK5:兄弟姉妹のうち、実家で親と同居している人はいない。

兄弟姉妹で実家を相続することになった時、兄弟姉妹の中に実家暮らしの人がいるのであれば、その人が住み続けるのが結論として合理的だ、という話になることが多いでしょう。

でも、実家暮らしの人がいなかった場合はどうでしょうか。
あり得る選択肢は、兄弟姉妹の誰かが住む、住まないなら売る、貸す、壊す、以上のどれかです。どれも大きな影響を兄弟姉妹に及ぼしますから、たとえ仲が良い兄弟姉妹でもその方針の決定には時間がかかるでしょう。

その間、建物はいったん兄弟姉妹で共有することととなり、実家は空き家になってしまいます。

あなたの実家が空き家になる日

どうでしたか?
「自分の実家もそうなるかもしれない」と思った方が多いのではないでしょうか?
特に面倒なのが、CHECK4とCHECK5で述べた、相続人が複数人いる場合の意思決定がうまくいかないというケース。私たち弁護士への相談も多いケースです。

ご実家の相続がスムーズにいった場合でも、家を使う予定がなかった場合、その家は空き家になります。

「空き家のままでも問題ないんじゃない?」そう思われる方もいるかもしれませんが、例えば、空き家となったご実家に他人が入り込んだら?あまり想像したくはありませんが、住み着かれたり、ゴミを放置されたり、放火されたりしてその火が近隣にも及んだら?老朽化した建物が、ある日倒壊したら?最近では、空き家の所有者を騙ってその土地家屋を勝手に売買する、「地面師」と呼ばれる集団による犯罪も増えてきています。そうした犯罪に利用されてしまう可能性もあるのです。

ご実家を手放すつもりがないのであれば、そうしたリスクを抱えながら、固定資産税を払い続けることになるのです。

脅かすようなことばかり述べて、不安にさせてしまったらすみません。
でも、お話ししてきた上記の問題は、放っておくと確実にやってくるのです。

では、一体どうしたらこれらのリスクを回避できるのか?
問題の発生時に対応できるのか?
次回ではそのポイントをお話ししていきます。
空き家オーナー予備軍は、必読です!

それでは、また次回。お楽しみに。

大久保朝猛(おおくぼ・ともたけ)

青森県出身。東京大学法学部卒業。平成19年9月弁護士登録。現在は、東京・池袋のサンシャイン60に所在する「へいわ総合法律事務所」の代表弁護士を務める(東京弁護士会所属)。不動産と交通事故の事案をはじめ、一部の特殊な企業法務を除き、ほぼすべての分野の事件の弁護を手掛ける。平成21年に実父が逝去したことを機に、空き家問題に我が事として真剣に向き合うことに。以後、不動産、債権回収、遺産、相続など、弁護士ならではの切り口から空き家問題に取り組み、他の関連士業と連携しながら総合的な解決を目指している。

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